フランス語の文法的特色


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フランス語その2
第二外国語としてのフランス語の文法的特色



本記事は,フランス語を第二外国語とする大学生,これから選択しようか悩んでいる新入生に向けて,その特色を紹介し,これを通じて,フランス語の効率的な勉強法を提示することを目的とします.

この記事は2つに分かれており,本記事ではフランス語の特色を整理して紹介することにします.こちらの記事にて,特色を踏まえてフランス語の勉強法を解説していきます.

フランス語の授業は,数多くの大学の第二外国語として開講されており,その単位は,進級のための必須条件となっている場合もすくなくありません.

本記事では,フランス語とはどういう言語で,またどんなふうに勉強すべきものであるか,できるだけ具体的に説明していきます.

その説明を通じて,第二外国語としてフランス語を履修している大学生のテスト対策となるばかりではなく,これから第二外国語を選択する新入生のためにも,判断材料を提供することを目指します.

断っておくと,今回はあくまで大学での第二外国語の授業を念頭においているため,リスニング,スピーキング(これらをまとめて,フランス語界隈では‘オラルorale’と呼びます)についてはコミットせず,もっぱらリーディングとライティングに役立つ情報をまとめます.

基本的な学部での授業は,リーディングを中心としているからです.

フランス語の文法的特色
まず,フランス語の文法的な特色を紹介しましょう.

ここでは,特にフランス語の特色を示すと思われる,1.品詞,2.法と時制について,適宜英語と比較しつつ,大事なところをピックアップして紹介します.

1.品詞
フランス語の品詞は,基本的に英語と変わりません.

つまり,名詞/動詞/形容詞/副詞/前置詞/接続詞等を基本としています.そのため,初歩的なフランス語の文章を構成する品詞を分析しようと思ったら,ほとんどの場合,英語の知識を流用することができます.

しかし,まったく英語と同じかといえば,そうではありません.特に相違が際立つ点を,a/ 名詞とb/ 動詞に分けて,具体的に見ていきましょう.

a/ 名詞の性数
フランス語の名詞が英語と異なる最大の点は,「性gender」を伴うという点です.

名詞の性は,フランス語の場合,男性masculin・女性fémininの二種類からなります.

各々の名詞がどちらの性をもつか,ということに一貫した規則はほとんどなく,逐一覚えなくてはならないのが辛いところです.

たとえば,「窓funêtre」は女性,「基準critère」は男性と決まっています.

女性名詞が場面によって男性名詞になることや,その逆は,どちらもありえません.

しかし,どちらにもなりうる名詞は存在します.

耳馴染みあるかもしれませんが,「男のケーキ職人pâtissier」と,「女のケーキ職人pâtissière」や,「俳優acteur」と「女優actrice」などは,同じ名詞で,男女を使い分けるものです.主に職業名などがこれに属します.

いずれにしても,名詞の性は英語にはありませんから,フランス語を始めるときの最初の障壁になります.(とはいえ,普通のヨーロッパ語には性の区別があるので,この場合特殊なのは英語の方ですが.)

何しろ,単語を覚えるときに,発音と意味に加えて性を覚えなくてはならないわけですから,面倒臭いには違いありません.

ところで,なぜ名詞の性を覚える必要があるのかというと,それは,当の名詞にかかる形容詞や冠詞,関係代名詞などが,その名詞の性に合致する,というルールがあるからです.すなわち,名詞の性によって,そこにかかる言葉の形が変わってしまうのです.

たとえば,定冠詞‘le(英語のthe)’は,男性名詞「意図dessein」にかかる場合は‘le dessein’となりますが,女性名詞「テーブルtable」にかかる場合は,‘la table’となるわけです.

形容詞も同様で,「新しいnouveau」は,男性形「新語un mot nouveau」と,女性形「新車une voiture nouvelle」と,両方の形をもちます.

こんなふうに,実際のテクスト上で大きな違いをもつために,名詞の性を覚えずにフランス語を読み書きすることは難しいということになります.

フランス語の名詞には,英語と異なる点が他にもありますが,とりあえず最も特徴的な違いは,やはり性の有無にあると言えます.


b/ 動詞
次に,フランス語の動詞の特徴を見てみましょう.

ここで取り上げる大きな特色は,フランス語の動詞は活用するconjuguer,という点です.

とはいえ活用という概念は,英語にも存在します.みなさんご存知,be動詞の変化や,その他の動詞では,「三単現のs」がこれにあたります.

英語のbe動詞が,主語に応じてamやare,is…と変化していくことを,活用と呼びます.

フランス語では,すべての動詞にこの活用変化が存在するというのが,英語との違いです.

例をとってみてみましょう.

英語のbe動詞にあたる動詞êtreは,こんな風に活用します.


être活用
      単数  複数
一人称  suis  sommes
二人称  es   êtres
三人称  est   sont


これは,英語の場合と同じノリで理解できると思います.しかし,フランス語が面倒なのはこれからで,be動詞以外の動詞,たとえば英語のhaveにあたるavoirも,活用形をもちます.


avoir活用

      単数  複数
一人称  ai   avons
二人称  as   avez
三人称  a    ont


これを逐一覚えなくてはならないということです.膨大になるのでここではこれ以上紹介しませんが,フランス語のその他すべての動詞には,活用形が存在するということになります.

まとめると,フランス語のすべての動詞は,基本として6つの活用形をもつということが言えます.

こう言うと,すべてを覚えなくてはならないようですが,基本的な形といくつかの規則を覚えてしまえば,使いこなすのは難しいことではありません.

しかし,英語と比べたときには,やはり手間がふえると言わざるををえないでしょう.


2.法と時制
フランス語の法と時制は,英語からすれば重なる点と異なる点をもちますが,それほど難解なものではありません.

時制
まず時制の面からすれば,重なる点が多いと言えます.

現在形や,未来形の概念については,基本的には英語と同様です.

すなわち,現在形においては,幅のある現在から,不変の真理にいたるまでの用法をもちます.未来形では,今後起こるであろうことについての推量や予定を表現します.

ところが,過去形は少し様子が違っています.

基本的に,漠然と以前のことを指示する「過去形」と,完了や結果を示す「完了形」を駆使して過去を表示する点は共通しています.

ところがフランス語では,英語の過去形が「半過去imparfait」と呼ばれ,現在完了に相当するものが「複合過去passé composé」と呼ばれます.

半過去は,過去のある時点で未完了の行為・事態を指し,複合過去は,完了のニュアンスを含みます.

さらに,フランス語には,物語的な過去を指すとされる「単純過去passé simple」なる時制も存在します.

この点はきわめて複雑なので細かく言及しませんが,英文法の過去システムと,形は似ているが,ニュアンスが大きく異なると考えてもらえればかまいません.

フランス語の時制規則は,概して,英語よりも複雑怪奇であると言って良いと思います.時制の数も多いですし,そのニュアンスも,ノン・ネイティヴには把握しにくいところです.

しかし見方を変えると,ここにフランス語,フランス文化の独自性が凝縮されていて,非常に興味深い点であるともとれます.




次に,フランス語の法について紹介します.

そもそも「法mood」というのは,文の現実性や語り手の意図,すなわちニュアンスを伝えるものです.みなさんも,「仮定法」は英文法で聞いたことがあるでしょう.

フランス語の場合,法は主に次の4種類あります.その名称と概要を記します.

① 直説法:事実を述べる.
② 命令法:禁止や文言.
③ 条件法:事実に反することを述べる.
④ 接続法:事実かどうかにかかわらず,語り手の思考をあらわす.
これらのうち,①〜③は英文法にも存在するベーシックなもののため,説明は割愛しましょう.

あえてコメントすると,③条件法は,英語で言う「仮定法」と同じものと考えてください.(「もし〜なら,…するだろう」というあれです.)名前が違うだけです.

条件法の作り方は動詞の活用に関わるので,実際にはきわめて重要なのですが,入門の段階では知らずとも構いません.

むしろ問題は,④接続法です.

接続法は,ほとんど完全に英語には存在しませんし,その用法もかなりフランス語に独特です.

接続法は,直説法と異なり,事実にコミットしない主張を表示します.

しかし,事実に反することを仮定する条件法(反事実条件文)ともちがって,事実かどうかとは関係なく,語り手の考えていること,頭の中にあるイメージを語り出す際に,用いられるものです.

具体的に考えましょう.基本的には接続法は特定の動詞や表現に伴うため,すべて同じ一文で表すことはできないのですが,一応近い主張をつくってみましょう.

①直説法:彼は寛大だ.Il est généreux.
②条件法:彼が寛大だったなら….S’il serait généreux…
③接続法:彼が寛大であってほしいと私は願う.Je souhaite qu’il soit généreux.
こうしてみると,すべての法において,動詞être(太字)の活用形が違うのが明らかだと思います.

このように,フランス語の法は,動詞の形によって表示され,それぞれ独特の意味を表明することになります.

英語の場合,仮定法であれ直説法であれ,動詞変化を伴う場合はない(正確には,過去形を伴う場合はありますが)のに対して,フランス語は,この点できわめて複雑なルールをもっていることになります.

もちろんフランス語を学習する上では,最終的に,すべての法の動詞活用を覚えなくてはなりません.

そのため膨大な暗記がひとつの動詞について必要になってきます.

これによって面倒ごとも増えますが,同時に,表現できるニュアンスの幅も,格段に増えることになるのです.(それに,ロシア語などの多くのスラブ語に比べれば,動詞活用は極めて簡潔で,少ないんです.)

まとめ
さて,以上,フランス語の特色と題して,英語との違いを明確にしてきました.

とくに注意したい相違点としては,①名詞に性があるということ,そして,この名詞の性に準じて,形容詞や関係代名詞,冠詞などが性数一致の変化を伴うということです.

また,②動詞に活用形が存在するということ.もちろん正確には英語にも活用形はあるのですが,フランス語の場合,そのルールが多岐にわたり,より複雑といえます.

最後に,③法と時制のニュアンスがやや英語とことなるという点です.



以上,フランス語文法の特色を指摘してみました.ここまでのところで,今後フランス語を履修しようか悩んでいる人や,履修したはいいものの,フランス語の全体像がつかめない,といった学生にとっては,参考になるものだったのではないでしょうか.








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